4月から就職される方もいらっしゃると思いますので、今回は「パワハラ」について書いてみようと思います。
パワハラ(パワーハラスメント)とは、上司など社会的な地位の強い者による 、「自らの権力や立場(パワー)を利用した嫌がらせ(ハラスメント)」のことです。
具体的には、大声で怒鳴りつける、「給料泥棒」などと侮辱する、暴力を振るうといった明らかなパワハラもありますが、わざと孤立させたり必要なメールを無視したりするなど、一見分かりにくいパワハラもあります。
また、有給休暇を与えない、残業を強要するなどもパワハラにあたります。
例えば、上司が、「なんだこの資料は。全然ダメだ。作り直せ。」と怒鳴って、それに対して部下が「どこがいけないんでしょうか。」と質問しても「自分の頭で考えろ。」などと言って、何度資料を提出しても具体的な理由も言わず突き返すような行為はパワハラにあたります。
資料を作り直すように言う場合には、「この資料では、資料を作る目的にこの部分が合致していないから、改善するように。」などとアドバイスするのであれば、正当な指導と言えますが、「とにかくダメだ。」というのでは単なる感情であって正当な指導とは言えないのです。
パワハラを行った者は、刑事責任(刑事罰を受けること)や民事責任(損害賠償義務を負うこと)に問われる場合があります。
・刑事責任
パワハラ行為が刑法の規定に該当する場合には、刑事罰を受けることがあります。
たとえば、暴力を振るって相手にけがをさせれば傷害罪(刑法204条)にあたります。また、皆の前で事実を適示して社会的評価を落とすようなことを述べる(横領事件の犯人であるかのように述べるなど)と、名誉棄損罪(刑法230条)にあたりますし、事実を適示せずに侮辱する(つかえない奴だ、給料分くらい働けと述べるなど)と侮辱罪(刑法231条)にあたります。
・民事責任
パワハラによってケガをさせられたり精神的苦痛を受けたりするなど、被害者に損害が生じると、パワハラをした者は民事上の不法行為責任(民法709条)を負い、損害賠償をする義務を負います。
さらに、パワハラが業務の遂行に関してなされたものであれば、パワハラをした者の使用者もまた不法行為による損害賠償責任を負います(民法715条)。
例えば、暴力、暴言のような典型的なパワハラではない具体例をあげると、以前、会社が、辞めさせたいと思っている人を暇な部署に1人で配置して、まったく仕事を与えなかったというものがあります。この事例では精神的苦痛を与えたということで、損害賠償義務が認められました。
また、これらの逆のパターンも存在しますので、ご注意ください。
・逆パワハラ
最近では、部下から上司などへ、アルバイトから正社員などへ「逆パワハラ」と呼ばれる行為も見られるようになっています。
例えば、上司の言うことを無視する、上司の正当な指導に対して「パワハラだ」と言う、上司を無能呼ばわりする、上司の悪口をSNS(ツイッターやインスタグラムなど)で拡散する(例えば、「うちの上司の〇〇、私の勤務態度とかいろいろウルサく言ってくるんだけど、エクセルもろくに使えなくてチョーウケるwww」などとインターネット掲示板に書き込む等)、不必要に休みを要求する等です。
これらの行為でも、場合によっては、刑事責任や民事責任を負うことになります。
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このように、パワハラ(または逆パワハラ)が行われると、パワハラをされた人が苦しむだけでなく、パワハラを行った者も各責任に問われますし、会社にとっても業務効率の低下、社会的評価の低下などの損失が出ます。
そのため、各会社でパワハラをなくすための研修、指導を行わなければなりません。
2019年5月に成立した改正労働施策総合推進法(パワハラ規制法)では、パワハラを行ってはならないと就業規則などで明示することや、企業に相談窓口設置などの防止策をとることなどを義務付けています。
この法律は、2020年6月から大企業に適用され、2022年4月から中小企業も対象になりますので、これからますますパワハラ対策の充実が求められます。
この法律では「職場における優越的な関係を背景とした言動」を問題にしていますので、逆パワハラに関しては直接規定しているものとは言えませんが、事業を行う者は、パワハラに限らず逆パワハラも防止する努力が必要です。
無料相談でパワハラについてのご相談もお受けしていますので、お気軽にどうぞ!もちろん逆パワハラのご相談もお受けしています!従業員を雇用されている事業者様からの、講習などのご相談もお受けしています!
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